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遊休不動産活用のアペックスホームズ株式会社

3D幾何学形状

タワーマンション贈与で高額な相続税負担を回避

  • 財産ドック
  • 12月2日
  • 読了時間: 10分

Cさん・60歳/妻・長女25歳


Cさんは、埼玉県で審美・矯正歯科のクリニックを開業して30年になります。30年前はまだ審美歯科や歯列矯正といったものが一般に浸透しておらず、しばらくは集患に苦労しました。しかし、Cさんの熱心な啓蒙活動が功を奏し、地域住民の歯の健康意識、審美感覚が高まるとともに患者数も右肩上がりに増えていき、開業から数年経つ頃には地元で1、2を争う評判の歯科医院になっていました。経営が軌道に乗って以降は、ずっと収入を下げることなく安定した経営を続けています。


Cさんが私のところへ相談に来られたのは、新聞で税制改正の記事を読んだことがきっかけです。平成27年1月1日より相続税が大幅増税されることを知り、ふと「自分が死んだら、家族はいくらの相続税を払うことになるのだろうか」と気になったのです。


インターネットで相続税の計算方法を調べ、自分のケースをざっと試算してみると、億単位の相続税が発生することがわかって驚嘆しました。「これでは家族に負担をかけてしまう」と危機感を覚えたCさんは、すぐに書店へと走り、相続税関連の雑誌や書籍を何冊か買って勉強してみました。 不慣れな分野なので一読しただけでは詳しいことはわかりませんでしたが、とにかく「現金で資産を持つことが一番節税から遠い」ということと、「資産を不動産の形で持つと節税効果が高いらしい」ということを理解したCさんは、不動産に強い会社、不動産を用いた相続対策に実績のある会社ということで、数ある候補の中から弊社を選んでくださったということです。


相談を受けて弊社で改めてCさんの個人資産を計算してみると、現預金だけで5億円近い額になっていました。このままCさんがあの世へ行ってしまったら、相続税がとんでもない額になってしまいます。


問題点1 現金が多くて相続税が高い


まず、Cさんの現預金がこれだけ多くなった理由から説明します。一つは、Cさんのクリニックが審美・矯正歯科であったことです。審美・矯正歯科は、虫歯や歯周病を治療する一般的な歯科に比べて患者1人当たりの診療報酬が高くなる傾向にあります。保険適用の外の自費診療を受ける患者さんが多いためです。1人当たりの治療単価が高く、しかも患者数が多いとなると、クリニックの収益はおのずと大きく膨らんでいきます。


また、Cさんのクリニックの形態が医療法人ではなく、個人による経営だったことも理由の一つです。Cさんのように収入が多いケースでは、個人の所得税よりも税率の低い法人税が適用できる可能性が高い「医療法人」で経営を行うと、節税の面で有利になりやすいのですが、Cさんはそうした対策を取っていませんでした。クリニックの収益がそのままCさん個人のポケットに入り、使い切れずに蓄積されていった結果、これだけ大きな現預金になってしまったのです。


さらに3つ目の理由として、Cさんの両親も資産家で、数年前にその遺産がCさんのもとに入ってきていたという経緯もありました。 さて、仮に今、Cさんが亡くなったとしたら、どのくらいの税額になるかというと、妻と長女の2人の相続人で、単純計算で約1億8000万円の相続税を負担しなくてはなりません。相続税は累進課税なので、相続財産が多ければ多いほど高い税率が適用されます。


Cさんのケースでは50%という高い税率が適用になり、遺産の3分の1以上が税金で出ていくことになってしまいます。現預金には遺産分けのときに分けやすいとか、納税資金として使いやすいというメリットはあるのですが、その一方で、額が多いと相続税の税率を上げてしまうというデメリットを持っているのです。


相続税を計算するときは、相続財産をすべて金銭に置き換えて計算します。土地や建物、有価証券、貴金属、美術品など「金銭で売買できる物品や権利」は、すべて金銭で何円と評価を出します(これを相続税評価といいます)。仮に1億円で買った骨董品でも、市場価値が6000万円だったら相続税の計算上は6000万円の財産として扱って構いません。つまり、差額の4000万円分、相続財産を圧縮できたことになります。


それに比べてキャッシュは、預金通帳に1億円と記載されていたら、1億円のまま1円も評価を下げることはできません。「1億円分の札束を6000万円で売買する」などということは常識的にあり得ないからです。相続税の常套句で「遺産は金で残すな」と言われてきたのは、額面通りのまま1円も圧縮できずに相続税を計算しなければならない点で不利だからです。


タワーマンションが節税になる理由


さて、Cさんのカウンセリングの結果、今すぐ何らかの節税対策を始めなければならないことが明らかになりました。そう説明したところ、Cさんから「実はタワーマンションを購入して娘に与えたいと考えていたんだ」と相談されました。


節税効果が大きく見込める対策の王道は、「キャッシュを不動産に換える」ことです。土地の評価は一般的に、路線価で行います。建物の評価は固定資産税評価で行います。これによって、実際の市場価値より相続税評価の方が、かなり安くなることは既にお話ししました。


中でもタワーマンションは、この「実際の価格と相続税評価による価格との開きが大きくなりやすい」という特徴があります。5億円で買ったタワーマンションが相続税評価では8割減の1億円やそれ以下になるといったことも珍しくはありません。


なぜこのような現象が起こるかというと、マンションは「1戸当たりの土地の持分が小さい」ためです。 例えば、500㎡の土地に一戸建てが立っている場合、1㎡当たり100万円とすると1戸当たりの敷地評価は5億円になります。同じ土地に総戸数50戸のマンションが立っている場合は、1戸当たりの敷地は「500㎡÷50戸=10㎡」となり、1000万円です。これが500戸のタワーマンションになると、500㎡を500戸で割るので、1戸当たりの持分はわずか1㎡と小さくなり、評価は100万円になります。


つまり、敷地面積が小さく、戸数の多いタワーマンションは、相続税の節税という観点からは大変有利に働くということです。


さらに言えば、タワーマンションの低層階でも高層階でも専有面積が同じであれば、相続税評価は同じになります。その反面、実際に売却するときの市場価値は、眺望が良くて人気の高い高層階の方が低層階の部屋より高く売れることになるでしょう。


1フロア上がるごとに100万円近く増額され、最上階になるとプレミアムが加算されることはよくあります。資産価値という点では、高層階を買うのがお得です。また、高値で売れやすい、買い手が付きやすいという点で言えば、田舎より都心の立地がお勧めです。


こうした点をまとめると、相続税の節税対策では「都心のタワーマンションの高層階」が最もメリットが大きいという結論になります。 Cさんはこういったタワーマンション購入のメリットについて事前に情報を得ていたことから考えるようになったようです。


問題点2 タワーマンションのリスク


しかしながら、タワーマンション節税を安易にお勧めするわけにはいきません。

リスクや注意点があるので、それを踏まえてもなお良い結果をもたららせると判断できなければ選択すべきではないからです。 タワーマンション節税での失敗例でよくみられるものを、5つ挙げておきます。「タワーマンションなら何でも相続税が低くなる」と早合点して飛びつくと痛い目を見ることになります。


  • 地震などの災害時のリスク タワーマンションはその構造上、高層階にいけばいくほど揺れが大きくなります。東日本大震災のとき、あるマンションの40階に住んでいた私の知人が、「地震でエレベーターが停まってしまい、階段を上がるのも下りるのも四苦八苦した」と嘆いていたことがあります。実際、大震災の後しばらくは、高層階より低層階を希望する購入者が増えました。

  • あからさまな節税目的では、相続税申告で否認されることがある 被相続人が亡くなる直前に買った億ションを、相続税の申告が完了してすぐ相続人が売却したケースがありました。これに対して税務署が異議を唱え、裁判で争われました。このケースの場合、億ションの購入目的が明らかに節税目的であったことが判明し、相続人が主張する低い価格での申告は認められませんでした。結局、市場での流通価格(2億円で売れた場合は2億円)を「相続税法上の時価である」として、申告手続きをし直すことになりました。

  • タワーマンション購入は、「税金逃れ」ではなく「資産運用・資産活用」として計画的に行っていくことが大切です。

  • 将来的に値下がりする可能性もある 売却したい場合にも、高額になるため購入者が限られがちです。 バブル崩壊のとき、何億円もするマンションが一夜にして雀の涙ほどの価値になってしまったことがありました。不動産はその時々の条件によって価値が変わりやすい“水もの”であることを忘れてはいけません。購入する際は、将来的な値下がりの恐れがないかどうか、物件の良し悪しを個別に見極める必要があるでしょう。

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解決策1 娘の了承を得て、タワーマンションを購入


タワーマンションを購入するにあたっては、Cさんだけでなく、Cさんの妻や娘さんにも面談し、その節税メリットやデメリットについて説明しました。


特に将来的にマンションを引き継ぐことになる娘さんにはリスクを十分に説明した上で、了承を得るようにしました。そうしておかないと、いざマンションを引き継ぐ段になって「マンションなんか要らない」とか「現金で欲しかった」などと言われてしまっては計画が台無しだからです。


十分なカウンセリングと物件の品定めを経て、Cさん名義で都心のマンションの最上階を約3億円で買いました。相続税評価額にすると約9000万円の物件です。こうしてキャッシュからタワーマンションに財産の形態が変わったことで、2億1000万円の評価減ができたのです。 ここでのポイントは、5億円の現預金すべてを投じる必要はないということです。


もちろん5億円のうちのなるべく多くの額を投じた方がより節税になる可能性は高いのですが、それでは流動性のある現金を失ってしまいますし、何かあったときの対処ができません。


解決策2 タワーマンションを購入後に贈与


また、さらに節税対策を一歩進めて、そのマンションを娘さんに生前贈与することにしました。生前贈与は誰もが取り組める相続対策として有効な方法です。


ここでなぜ初めから現金を贈与するのではなく、マンションを購入してから贈与したかをご説明しますと、贈与する場合にも課税の算出に相続税評価額を利用するからです。 このケースでいえば、現預金で3億円を贈与するなら、それに対して最大55%税率の贈与税が課せられることになったのですが、タワーマンションとして9000万円の評価額になってから贈与すれば、9000万円に対しての贈与税で済むので大幅な節税をすることができるのです。


さらに贈与の場合は、一度にどの程度の金額を贈与するかで税率が変わってきます。通常利用される贈与の場合では、年間110万円までは基礎控除として無税で贈与できるので、時間をかけて何度も回数を重ねれば重ねるだけ税額を低くすることができます。


例えば、300万円を贈与しようと思ったら、一度に贈与すると110万円の基礎控除を差し引いた190万円に10%の税率が課され、19万円を贈与税として取られます。しかし3年間に分けて毎年100万円を贈与すると、基礎控除内で済むので贈与税は取られないのです。 Cさんはまだ60歳で相続対策を比較的早く始められたので、マンションは5回に分けて1800万円ずつ持分を贈与することにしました。


すると毎年496万円の贈与税で、合計が約2480万円となります。9000万円を一括で贈与すれば、約4250万円の贈与税が取られていたのですから、ここでも1770万円の節税ができました。 このようにして、Cさんは3億円ものキャッシュをたった1770万円の税金を支払うだけで娘さんに移転させることができたのです。


娘さんは贈与されたマンションをさっそく賃貸に出しています。賃貸ありきで選んだ物件でしたので、借り手は募集から間を置かずに見つかりました。毎月決まった額の家賃収入が得られることで、娘さんも大いに喜んでいます。


※購入した不動産をすぐに贈与したような場合、不動産を贈与したのではなく、購入資金を贈与したとみなされる可能性があるので注意が必要です。


※タワーマンション節税については一定の制約がかかる可能性が報じられています。



「税理士が教えてくれない不動産オーナーの相続対策」財産ドック著 - 幻冬舎刊より



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